Link to English page 'Founded with an eye to the world' 柴原 茂樹 / 東北大学大学院医学系研究科・教授、The Tohoku Journal of Experimental Medicine編集長 三須 建郎 / 東北大学大学院医学系研究科多発性硬化症治療学寄附講座助教

TJEMの将来像

今後のTJEMを展望する

三須助教は現在TJEMをどのように評価していますか?

研究者としては、ネイチャーやサイエンスといった超一流誌にこだわりたいのは当然かもしれません。ただ、TJEMでの体験を通して私が感じているのは、特に競争の激しい分野では誰よりも早く論文化して、より多くの人に読んでもらえることの価値や、国内にそういった選択肢があるということの優位性です。内容がしっかりしていれば雑誌の種類はあまり問題ではなく引用されると思いますし、むしろ、それを元に発展していくことができると思います。この論文は決して消えない小さな炎を私に与えて続けてくれています。自分を育んでくれた雑誌といっても決して言いすぎではないと思っています。

心強いお言葉ですね。研究者が一流誌にこだわる気持ちはよくわかります。ただ、日本の研究者は、外国で刊行される国際誌に投稿したいという意識が強く、国内で刊行される雑誌については実績があっても、不当に低く評価する傾向があるように思います。

三須助教に<TJEM>の今後への期待を聞きました。

勝手なことを言うなと叱られそうですが、TJEMは今のままであってほしいですね。日本発の知見が誰よりも早く正確に伝えることができるTJEMは、若い研究者にとって、一流誌と同等、あるいはそれ以上の価値をもたらすことができるものだと思います。私自身がTJEMで経験できたようなことを若い人たちにも体験してもらえたらと考えています。

今後、<TJEM>はどこに向かっていくのでしょうか。

三須先生の場合のように、編集長冥利に尽きることもありますが、つらい事も多々あります。論文の採択率が20%ということは、80%の著者からは恨まれているわけです。不採択となった論文の著者の皆様には、TJEMを選んでくれた事に感謝すると共に、査読者の意見が今後の研究の参考になればと願っています。おそらく学内の著者からもあの野郎と、嫌われていると思います(笑)。

年々オンラインジャーナルが増えていますので、膨大な数の論文が世界中を駆け巡っています。こうした時代に、TJEMはどうあるべきか、あるいは今後どのように発展させて行くべきか、悩みは尽きません。しかし、これまでの編集方針を大きく変える必要はなく、新たに対象領域に加えた災害科学にも力を注ぎたいと考えています。東日本大震災とそれに伴う悲惨な津波被害が、まさに869年の貞観津波の再来であることを知り、記録の保持と情報発信の重要性を再認識させられました。

「東北ジャーナル刊行会」を設立したことで、助成を受けることができるようになったことはTJEMの刊行にとって大きな支援となったそうですね。

独立行政法人日本学術振興会の科学研究費助成事業(研究成果公開促進費)の支援「学術定期刊行物(欧文誌)」を受け刊行してきました。しかし、学術定期刊行物(欧文誌)を対象とする科研費は、平成24年度で廃止されました。幸い、その翌年から新たに導入された研究成果公開促進費「国際情報発信強化」に採択され(No. 252007)、編集体制の強化を目的に、編集長の下に、3名の領域別編集長Executive Editors(臨床系、基礎系及び災害科学系)を配置し、新体制を発足させることができました。TJEMの対象分野として、減災・防災という観点から災害科学の領域を加えたため、新たな編集体制を構築する必要があったのです。さらに、TJEMXML化(本文全てをオンライン上でHTMLページとして公開)を達成し(https://www.jstage.jst.go.jp/browse/tjem)、職員1名を雇用することができました。 日本学術振興会には心より感謝しています。

最後に柴原編集長に<TJEM>の今後を聞きました。

TJEMの創刊以来、刊行にご尽力頂いた多くの先生がたの熱い思いを継承し、微力ながら、TJEMの編集長としてその発展に貢献できることを幸福に感じています。

高度な学術誌の存在はその国の文化の尺度であり、我が国の国際的な立場を考えれば、世界の重要論文を掲載した学術誌を刊行し、国際的規模で流布させることも極めて重要です。TJEMのように医学関連の全領域を対象とする英文総合医学誌は、我が国では殆ど例がなく、TJEM刊行を継続する意義は大きいと思います。特に、災害の記録保持と情報発信により、TJEMとして積極的に防災・減災にも貢献すべきであると考えています。

折しも、TJEM創刊100周年にあたる「2020年」に東京オリンピックが開催されます。被災地の復興が遅れてしまうのではないかと懸念もありますが、この機会に、TJEMをさらに充実させ、我が国からの情報発信力を強化していかなければならないと考えています。「Tohoku」を誌名に冠しているTJEMが、微力ながら東北地方の復興にも貢献できればと願っています。

THE TOHOKU JOURNAL OF EXPERIMENTAL MEDICINE, Tohoku University Medical Press